地方議員の不祥事が社会面を賑わす事件が相次いでいる。 「お前の場合の方がもっと賑わせただろう。人のことを言えるのか!」と、おしかりを受けるかもしれないが、事件の質が違う。 少なくとも最近の不祥事は『国策捜査』と呼べるレベルのものではない。人としてまともかどうかのレベルのものである。しかし、よくよく考えると地方議員がこれだけメディアを賑わすことは希だ。その上、これだけ立て続けに起きるというのも珍しい。 これは偶然、事件が立て続けに起きたということだろうか? それとも地方議員の質自体が劣化してきていると見た方がいいだろうか。 今後、数回に渡って私なりに地方議会の現状を分析し打開策を提示していきたい。『とんでも地方議員』の実態も含めて今後どうすべきか提示していこうと思う。 とは言うものの基本くらいは押さえながら話を進めるべきだろう。 地方議員と言っても、いくつかの分類がある。大きく分けると、都道府県議会と市町村議会の2種類に分けることが出来る。 市議会の中でも政令指定都市の市議会議員は都道府県議会と同格の影響力を持っているので、明確に分けて考えなければいけない。政令指定都市は、全国で20市(北は札幌市から、南は熊本市まで)。「政令都市ってよく聞くけど何が違うの?」と思われる方も多いと思う。政令指定都市は都道府県が行っていた事業を、全て自前で行える。児童や障害者などの福祉、都市計画や学校教員の採用、NPO法人の認証などこれまで都道府県が行っていたものが都道府県にいちいちお伺いを立てなくても『ワンストップ』で出来るわけである。行政の幅が広がるということは市議会議員によるチェック、悪く言えば、『口出し』『口利き』が出来る幅も広がるわけだ。だから政令指定都市から選出される都道府県議会議員は仕事が少ないと言われる。札幌の道議会議員などは札幌市議会議員が地域の問題を解決する権限を持っているので、札幌市議の方が威張っている感じもする(笑)。 さて、なぜ地方議会で問題議員が多発しているかと言うことを分析していくため、まずは、地方議員のなり手に焦点を当てていきたい。中でも市町村議会の例に着目する。 市町村議会でも、市議会と町村議会ではっきり分かれるのが、「政党の色」である。市議会では政党色が濃くなるが、町村議会では共産党と公明党以外はほとんど無所属で立候補している。市議会議員に当選しようとなるとある程度の組織が必要になってくるからだ。 では政党毎に地方議員をどのように養成しているのか見てみると、共産党と公明党は地方でも組織がしっかりしているので組織内の活動家に目星を付けておき、生活を保障した上で立候補させている。私が政治活動を始めてから一番驚いたのは私の選挙区の広尾町という役場の課長さんが共産党から立候補したことだ。この課長さんは町長などと一緒に上京して私の議員会館などに来て街の陳情案件を説明していたので、共産党から立候補したときは「まじですか?」と驚いたものだ。 だが共産党議員のなり手はやはり教員が多いだろう(保育士さんも意外と多い)。公明党の場合、職種はほぼまばらである。クリーニング屋さんもいれば主婦もいる。では主要政党である自民党、民主党はどうであろうか。自民党は農家を含む自営業者が圧倒的に多い。帯広市を例に取ると農村議員は3つの区域割りがなされており、それぞれの区域の農協や地域のボスの了解を得て候補が決まるというプロセスを経ることになる。これは帯広市だけでなく、北海道の他の町村でも同様の候補者選考が行われている。恐らく他の府県の農村でも同様だろう。本州では、農業委員と市町村会議員を地域で割り振っているところが多い。ボスが「あいつが市議やっているうちは農業委員で我慢しろ」という具合だ。 農村議員の場合、活動できる期間も3期までとほぼ決められている。これには意味がある。地方議員年金は3期12年務めないと受給資格を得られなかったからであろう(平成23年6月法改正により廃止されたのでこの不文律は変わってくるだろう)。もし3期を過ぎても議員として活動したい場合には自前の票で当選しなければならないため地域推薦無しで立候補となるがそういう人はほぼいない。票も金も自分で用意しなければならないからだ。自営業以外では自衛隊の退職者、宗教団体の支援を受けている者が継続的に後継候補を立てているケースが多い。 一方、民主党や社民党は連合が主体となって主要組合が自分達の組合員の力を使って当選させる『連合推薦議員』が多い。支援する団体を候補毎に割り振って当選させる仕組みだ。郵便局、教員、自治労(役場職員の組合)などが大きな団体は自前の議員、他の小さな組合は2つか3つの組合が集まって連携して一人の議員を当選させる。その他で当選しているのは国会議員や県会議員の秘書上がりの人間がボスの後援会に頼って当選するケースくらいだろう。「民主党の思想に共鳴して市議に立候補しました」というケースはほとんど聞いたことが無い。 組織の無いみんなの党や維新の会などの新興政党の立候補者ははっきりと二つに分かれる。他の主要政党で公認を外れた者(前回選挙で落選し公認を得られないなど)か、政治を変えたいと本気で思って立候補している若者の二パターンだ。これも政党の勢いが消えると立候補者は激減する。最近、維新やみんなの党で立候補しようという地方議員がいないのを見てもわかるように、「当選」するための道具としての公認だからだ。 しかし地方議員のなり手が減少している。特に町村議会では定数割れも起きているのが現状だ。 なぜそうなっているのか? 次回、そこに迫りたい。 |
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