実は、町村の議会では議員のなり手がいなくなっている。 昔は4000あった地方自治体も、平成の大合併により1831自治体と半減した。自治体の数が減ったということは地方議会の定数自体も減少する。すなわち、争いが熾烈になると普通考える。しかし、無投票当選の議会が増えているのが実態なのだ。 私の地元でもその傾向が顕著に出ている。ワインで有名な池田町では前回の統一地方自治体選挙で定数に一人足りず、立候補した全員が無投票当選。定数に満たないことが前日までに既にわかっていたので「どうせ無投票なら立候補してみるか」という人がいてもおかしくないはずだが、実際には誰も出馬しなかった訳である。 定数に満たない場合、国政選挙などが行われる時に補欠選挙で再度、議員を選ぶことになる。欠員1を埋める補欠議席では2名の立候補があったが、どちらの候補も地元では資質に「?マークが付く候補」であり、「しっかりした人を誰か出すべきだ」と知人の池田町民も話していたが、結局は他から立候補の届け出は無くこのうちの一人が当選した。 なぜ地方議会へのなり手がいなくなっているのだろうか? 私が考える理由は下の3つだ。
1 報酬の低さ 2 地方議員年金の廃止 3 中小零細企業の厳しい環境 池田町議会議員の報酬は月額16万1000円。期末手当は6月と12月にそれぞれ約2ヶ月分ずつなので、だいたい年収220万円だ。 ちなみに、私の選挙区で一番低いのは更別村の15万2000円。一番高いのが音更町の24万4000円である。中心都市の帯広市議は47万円。全国で見てみると一番高い町議会議員の給与は神奈川県の葉山町で月額40万円。一番低いのは東京都の青ヶ島村の月額10万円である。町村議会議員の全国平均は18万円であるので、調べてみると私の選挙区の報酬額は平均より少し下回っている町が多い。 話を戻す。 民主党や社民党の地方議員の場合、昔は、自治労や北教組(日教組)の活動家が地方公務員から役場や教員を辞めて立候補したが、地方議員年金の廃止により60歳の定年を前に立候補する人は激減している。サラリーマンだとこの給与では仕事を辞めて立候補しようとしたら、別に飯を食べていく算段(損害保険屋か行政書士などが多い)を考えなければいけないのでハードルが高い。 自民党の地方議員の供給源である自営業者でも、月々20万円程度の収入で議会に縛られて自分の仕事が出来なくなるのを嫌がり、立候補するなり手が減っている。減るどころか私の地元の清水町では町議会議員に当選した後、農協の役職員に欠員が出たので町議を辞職して農協に就職したケース、浦幌町の運送業を営む自営業者が仕事に専念するために任期途中で町議を辞職するというケースも出てきている。 つまりは、誰しも町議会議員の仕事どころではないということだろう。現職でも辞めるケースが増えているのだから、新たに仕事の時間を議会活動に取られてまでやろうという人がいないのも当然だ。また議員になるとどうしても冠婚葬祭への出費が増える。支援者から「ディナーショーのチケット買って」と頼まれれば、チケット代で1万円、後援会の親御さんが亡くなって葬儀に参列すれば香典代で1万円、知人の叙勲の祝賀会に呼ばれれば会費で3000円、付き合いでビール会に行けば会費で2000円……などと、どんどん出費が嵩んでいく。電報でお悔やみを申す弔電の電報代も馬鹿にならない。ちなみに私の地域の北海道議会議員は当選している議員4名の話し合いで弔電を出すことを廃止した。 だから、議員になって報酬を貰っても割に合わないとなる。 こうして民主党も自民党も地方議員の供給源たる層から立候補者が出にくくなっているという現状がある。そうなると地元にいて定職も無くぶらぶらしている人が受かりそうだから立候補してみようかという『ののちゃん』みたいのが出てくる。国会議員や地方議員の事務所に出入りしていて、変に野心ばかり大きくなってきて「じゃあ、やってみるか!!」というケースも多々ある。 そうなるとまともな議員は定年して年金も確保出来て、「よし町のために頑張るか!」という人か、「仕事は息子に任せておけば安心だから、いっちょやってみるか!」という自営業者か農家の人しかいなくなってくる。これでは若い人の意見を反映する議会にはなり得ない。 市会議員ではまだ無投票当選の自治体は少ない。しっかりした報酬が保障されているからであろう。しかし、これも報酬月額が少なくなれば、やがて人口の少ない市議会から町村議会と同じような状況になってくるのは目に見えている。 こういう状況になると、有為な人材を確保するために「定数を減らしてでも報酬を上げるべきだ!」という議論が出てくる。 ならば、どうすべきであろうか? 次週は、地方議員の歴史的経緯や海外の事例を踏まえながら考えていきたい。 |
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