朝日新聞の大誤報に産経以外の多くの新聞は沈黙を守り、テレビもほとんど報じていないようです。中でもNHKがまったく報じない(ウェブサイトで検索しても1件も出てこない)のは、いろいろな憶測を呼んでいますが、私はこれはNHK自身のスキャンダルに飛び火しないように封じているんだと思います。 これはいわゆる「番組改編問題」の原因になった女性国際戦犯法廷です。当時は制作の過程でNHKの上層部が介入したことが問題になりましたが、これは逆。こんな非常識な企画を採択したことが間違いで、取材したあとでも没にすべきでした。 この戦犯法廷なるものは、昭和天皇を弁護人なしで模擬裁判にかけ、次のような「判決」を下したものです。 ---------------------------------------------------------------- 検察団が被告人天皇裕仁について立証したことを認定し、天皇裕仁は、共通起 訴状中の人道に対する罪の訴因1と2である強姦と性奴隷制についての責任で有 罪と認定する。また人道に対する罪の訴因3の強姦についても有罪である。さ らに裁判官は、日本政府が、「法廷憲章」第4条が述べる意味で、「慰安所」 制度の設置と運営について、国家責任を負うと判定する。 ---------------------------------------------------------------- ここに書かれているように、この「法廷」の根拠とする証拠は、朝日新聞の報じた吉田清治などのデマであり、「検事」として天皇を訴追した黄虎男は、北朝鮮の工作員でした。 それでわかるように、ここで「立証」された事実は、ほぼ100%でっち上げであり、こんな異常なイベントを(いくら教育テレビとはいえ)45分かけて特集するのは前代未聞です。事前に話を聞いた安倍晋三氏などが批判したのは当然でした。 この番組ができる経緯は複雑で、もとは2000年8月にこの「法廷」の主催者であるバウネット・ジャパンの発起人だった池田恵理子氏(NHKエンタープライズ21)が企画し、ドキュメンタリージャパン(DJ)というプロダクションに提案させたものです。池田氏(私とは無関係)はNHKの極左グループ「チャイナ・スクール」の一員として有名で、これは主催者が番組のプロデューサーであるという実態を隠すためでした。 2001年1月の放送の直前に放送総局長や番組制作局長の試写が行なわれ、大幅な再編集が行なわれました。これがバウネットによるNHKに対する訴訟に発展し、2審までは原告が勝訴して、取材先の期待どおりの番組を放送する「期待権」なるものを裁判所が認めましたが、最高裁ではNHKが逆転勝訴しました。 さらに2005年に朝日新聞が「安倍氏などの政治的圧力で改変した」という記事を出したため騒ぎが再燃し、NHKと朝日新聞の紛争に発展しました。このとき朝日の本田雅和記者の取材した録音テープが『月刊現代』に流出し、この責任をとって朝日の編集局長が更迭、本田記者もPR部門に異動しました。 この問題は「政治家の言論介入」が争点になりましたが、当時その番組を見た印象は、「よくこんな番組を放送したな」という感じでした。「法廷」そのものの映像は大幅にカットされ、さすがに昭和天皇の有罪判決はなかったが、いろいろなインタビューが挿入されて支離滅裂。1本まるごと没にして、別の番組の再放送でもすべきでした。 この騒ぎを振り返ると、私のように当時の状況を知っている者にとっては、マスコミの取り上げ方がまるで見当違いでした。DJのプロデューサーにも話を聞きましたが、「NHKがこっちに持ち込んだ話なのに、裁判ではDJが賠償責任を負うことになって驚いた」といっていました。 この番組が騒がれたのは「日本軍の恥部を暴いた番組をNHKが隠蔽しようとしている」と思われたためでしたが、いま見ると朝日の大誤報と同じく、すべて取材する側の妄想です。そういう妄想に一定の根拠を与えた朝日の罪は重い。今回の中途半端な検証記事ですませず、彼らの歴史認識を徹底的に追及する必要があります。 |
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