2011年6月17日金曜日

「やぶ医師のひとりごと」 睡眠時無呼吸症候群の治療2

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 ◆  やぶ医師のひとりごと    第 283 号  ◆
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   2011年6月17日発行 購読者数 9738名
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 <本日のテーマ>  睡眠時無呼吸症候群の治療2
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皆さん、こんにちは。

今回から購読して頂いた方、はじめまして。

循環器内科医のDr. Iです。

今日も、元気を出して行きますよ〜♪

今週も、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」についてです。

まずは、先週までの復習。

 ●睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

  ○英語で書くと、 sleep apnea syndrome

   略語で(SAS:サス)と呼ばれる。

  ○睡眠中に一時的に呼吸が止まる病気。

   いびきを伴う事も多い。

  ○本人は十分に睡眠をとっているつもりでも、

   実際は睡眠不足になり、昼に眠くなり、

   居眠りをする事もある。

  ○高血圧、糖尿病、狭心症・心筋梗塞・脳卒中など、

   他の生活習慣病を合併する確率は数倍と高い。


 ●睡眠時無呼吸症候群の症状

  ○いびき、日中の眠気、居眠り

  ○集中力低下、注意力散漫

  ○頭痛、動悸、抑うつ状態、等


 ●睡眠時無呼吸症候群の定義

  ○睡眠中に無呼吸を繰り返し、その結果、日中に眠くなる、

   熟睡感がないなどの種々の症状を呈する疾患。

   無呼吸、低呼吸をひと晩7時間の睡眠中に

   30回以上、あるいは1時間当たりに5回以上起こす病態。


  ○1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を

   無呼吸低呼吸指数(AHI)と呼ぶ。


  ○睡眠時無呼吸症候群の重症度

   ▲軽症:AHI(無呼吸低呼吸指数) 5ー15回。

   ▲中等症:AHI(無呼吸低呼吸指数) 15ー30回。

   ▲重症:AHI(無呼吸低呼吸指数) 30回以上。


  ○睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因

   ▲肥満

   ▲扁桃、アデノイド(咽頭扁桃)が大きい

   ▲下顎が小さい、舌、軟口蓋(のどちんこ)が大きい

   ▲鼻すじが曲がっている、鼻が低い

   ▲アレルギーや花粉症で、鼻詰まり


 ●睡眠時無呼吸症候群の検査

  ○問診

  ○簡易検査

   ▲携帯型の装置で呼吸状態を見る検査。

  ○終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査

   ▲呼吸状態に加えて睡眠状態も調べる検査。

 ●睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療

  □軽症の場合は、まずは生活習慣を改善するのが一番。

   SASに効く「薬」は、今のところない。

  ○生活習慣の改善

   ▲減量

    □SASの原因で一番多いのが「肥満」。

    □体重が多いと、のどの周りにも脂肪がついて、

     空気の通り道が狭くなるので、減量が必要。

    □「食事療法」と「運動療法」が特に大事。

   ▲飲酒の制限

    □お酒には上気道の筋力を弱める作用があるので、

     お酒を飲むと呼吸が弱くなったり、一時的に

     無呼吸になる事があるので、飲酒の制限が必要。

   ▲禁煙、睡眠薬の一部は注意が必要


  ○マウスピース

   □下顎が小さく、空気の通り道が狭くなって

    SASになった人には「マウスピース」を使う。

   □主に、軽症から中等症くらい人に使われる。


  ○CPAP治療(経鼻的持続陽圧呼吸療法)

  ○外科手術

睡眠時無呼吸症候群(SAS)というのは、

その名の通り、眠っている時に呼吸が止まる病気です。

眠っている最中にいびきをかいて、呼吸が止まるので

本人は十分に寝たつもりでも、酸素が足りず、

いわゆる「睡眠不足」の状態なんです。

だから、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状というのは、

昼になっても眠いままなので、居眠りをする、とか。

集中力が低下して、注意力が散漫になったりします。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断するためには、

患者本人、家族に話を聞くのが大事です。

それ以外に、携帯型の装置を使って、呼吸状態をみる、

「簡易検査」や、脳波なんかの検査加えて睡眠状態もみる

「終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査」という検査もあります。

検査の結果、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)が、

ひと晩7時間の睡眠中に30回以上、あるいは

1時間当たりに5回以上起こせば、SASと診断されます。

SASの中でも、AHI(無呼吸低呼吸指数)が5ー15回だと軽症、

15ー30回だと中等症、30回以上だと重症と呼びます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療で一番大事なのは、

生活習慣の改善です。

SASの原因で最も多いのが、「肥満」ですから、

食事療法や運動療法をして、体重を落とすのがベストです。

それ以外に、日本人で多い、下顎が小さいのでSASになった、

という人には、「マウスピース」による治療も行われます。

って話でしたね。

  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

そいじゃあ、本日も先週に引き続き

「睡眠時無呼吸症候群の治療」についてです。

 ●睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療

先週勉強した通り、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療には、

  ○生活習慣の改善

  ○マウスピース

  ○CPAP治療(経鼻的持続陽圧呼吸療法)

  ○外科手術

があります。

前回は、「生活習慣の改善」と「マウスピース」について

お話しましたので、今回はその続き。

「CPAP治療」と「外科手術」について説明してきましょー!

 ○CPAP治療(経鼻的持続陽圧呼吸療法)

「CPAP」って言葉、知っていますか?

普通は「CPAP」の読み方すらわかりませんよね。

CPAPは「シーパップ」って読みます。

Continuous Positive Airway Pressure

の略語で、日本語にすると、「持続的陽圧呼吸」になります。

このメルマガは基本的に、一般の人向けに書いていますけど。

医療関係者の方も結構多いんですよ。

医師や看護師等の医療関係の方は、CPAPっていう言葉は、

「人工呼吸器」で聞いた事あるんじゃないですか。

人工呼吸器っていうのは、その名の通り、

機械的に呼吸をさせる事が出来る機械なんですけど。

人工呼吸器の設定にはいろいろあります。

患者さんがものすごい重症の呼吸不全で、

全部機械が呼吸を補助してあげないと生きていけない。

という人には、酸素をたくさんあたえて、

呼吸全てを補助する、という設定にします。

でも、だんだん、患者さんの状態が良くなっていくと、

自分で呼吸もある程度できるようになるから、

機械が一部、呼吸を補助してあげる、っていう設定になります。

患者さんの呼吸状態がかなり良くなって、ほとんど自分で

呼吸ができるんだけど、ちょっとだけ機械で助けてあげる、

っていう設定が「CPAP(シーパップ)」です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)で出てくる機械のCPAPも、

人工呼吸器のCPAPと理屈では同じです。

ただ、人工呼吸器と違うのは、当たり前ですけど、

のどに直接、挿管チューブを入れる訳ではありません。

そんな事したら、めちゃくちゃ苦しいですから、

苦しくて夜も眠れなくて、治療になりません。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)のCPAPというのは、

鼻にやわらかい専用のマスクをつけて、ポータブルの

コンプレッサーを使って、一定の圧力をかけて、

人工呼吸器のように鼻から気道に空気を送り込んで、

気道を広げて呼吸の通りを良くしてやる治療です。

口で言ってもわかりにくいですから。

参考までに、写真を載せておきますね。

参照:「SASに対するネーザルCPAP療法」

http://www.ops.dti.ne.jp/~ueshima/CPAPdetail.html

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者さんは、寝ているときに

一時的に呼吸が止まる事はありますけど。

「呼吸不全」って訳ではありませんので。

人工呼吸器と違って、「酸素」を送るのではなくて、

「空気」を送っている、というのも違いですね。

それと、口からではなくて「鼻」にマスクをしてやるので。

nasal CPAP(ネーザルシーパップ、鼻シーパップ)

と、普通の人工呼吸器のCPAPとは分けて呼ぶ場合もあります。

もちろん、睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、

寝ているときに呼吸が一時的に止まる病気ですから。

鼻にマスクをつけるのは、睡眠中だけで、

日中は普通に仕事とかも出来ますよ。

CPAPをやったら、「次の日からめちゃくちゃ良くなった」

というくらい、一晩で劇的に症状が改善する人もいます。

軽症の場合は、減量や生活習慣の改善だけで、

SASが良くなる場合があるんですけど。

それでは改善しなかった、という患者さんとか、

マウスピースの治療もあまり意味がないような、

重症の患者さんにも効果がある治療です。

ちなみに、CPAPはAHI(無呼吸低呼吸指数)20以上の、

中等症以上の睡眠時無呼吸症候群(SAS)の場合は、

保険も効く治療になりました。

CPAPをやるには、機械を借りて、自宅でやるんですけど。

レンタル料は、病院で支払う医療費に含まれていて、

自己負担額は3割負担の人で、月に5000円弱になります。

最初の方で書いた事ですけど。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)で重要なのは、

SASがあると、高血圧や糖尿病になりやすい。

心筋梗塞とか脳卒中にもなりやすい、

そしてそういう病気でなくなる確率も高くなっちゃう。

という事なんですよ。

でも、CPAPの治療を行うと、睡眠時無呼吸症候群の人の、

高血圧を予防できたり、心筋梗塞や脳卒中の死亡率を

低下させる事が出来る、という事がわかっていますから。

CPAPはSASの治療法として全世界で最も広く

使われている、とても重要な治療なんですよ。

 ○外科手術

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因の中には、

  ▲扁桃、アデノイド(咽頭扁桃)が大きい

  ▲舌、軟口蓋(のどちんこ)が大きい

  ▲鼻すじが曲がっている

こういう場合もあるんです。

舌を切るって事は、さすがに出来ないんですけど。

扁桃、アデノイド(咽頭扁桃)、軟口蓋(のどちんこ)が、

極端に大きくて、のどが狭くなってしまって、

睡眠時無呼吸症候群(SAS)になっている、という人の場合。

手術でこれらを切り取ってしまう、という治療もあります。

具体的には。

扁桃肥大がある人には、「扁桃摘出術」。

アデノイドが大きい人は、「アデノイド切除術」。

鼻中隔湾曲症という、鼻の真ん中が曲がっている人には、

「鼻中隔矯正術」を行います。

レーザー等を使って焼き切る治療が主に行われるんですが。

痛みが残ったり、傷口が瘢痕化したりとか、

良い事ばっかりじゃないので。

現在は、SASの治療で最初に行われる事はありません。

いずれにせよ、誰にでもできる治療ではありませんので、

専門の耳鼻科の先生に手術した方が良いかどうか、

判断してもらう必要がありますよ。

そんなわけで、本日も「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療」

についてでした。

そいじゃあ、今日はここまで。

いつものように、下にまとめを書いておきまーす。

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【今日のまとめ】


 ●睡眠時無呼吸症候群の治療2

  ○CPAP(シーパップ)治療

   ▲Continuous Positive Airway Pressureの略

    日本語だと、経鼻的持続陽圧呼吸療法の事。

   ▲鼻に専用のマスクをつけて、一定の圧力で気道に空気を

    送り込み、気道を広げて呼吸の通りを良くする治療。

   ▲CPAPの機械を借りて、自宅で寝ている時だけつける。

   ▲重症のSASでも効果がある。

   ▲SASの患者にCPAPを行う事により、

    生活習慣病になる確率を減らし、

    心筋梗塞や脳卒中の死亡率を減らす事もできる。


  ○外科手術

   ▲扁桃摘出術

   ▲アデノイド切除術

   ▲鼻中隔矯正術、等


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【編集後記】

薬とか手術は、他の病気の治療でもやりますけど。

「CPAP(シーパップ)」なんて治療、

睡眠時無呼吸症候群(SAS)以外では、

ほとんど聞かない治療ですよね。

名前を覚える必要はないんですけど、

なんとなくそんな治療があるんだな、

って事だけわかれば良いですよ。

SASの治療で、一番大事な治療ですから。

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