冷泉彰彦 現在、プリンストン日本語学校高等部主任。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を隔週寄稿。「Newsweek日本版公式ブログ」寄稿中。NHK-BS『cool japan』に「ご意見番」として出演中。 アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」『冷泉彰彦のプリンストン通信』では、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届け! | どうして「鉄道」なのかという理由は、3つぐらいあるように思います。 まず、エネルギー効率です。自動車や飛行機に比べると、移動にかかるエネルギー効率、そして環境負荷という意味では、まだまだ鉄道にはメリットがあると思うのです。一見するとムダに見える新幹線でも、利便性が増す一方で、省エネ効果があるのは間違いないわけです。 例えば、来年の(恐らくは)3月に北陸新幹線は金沢延伸しますが、これによって多くの人が関東から北陸の移動に新幹線を使うと思います。その分だけ、羽田=小松線の飛行機は減便になるわけで、あのJALとANAが巨大な777をジャンジャン飛ばしている航路が閑散としてくるわけです。航空会社にはマイナスかもしれませんが、環境負荷ということでは大きな意味があると思います。 2つ目は、社会の変化を図るバロメータという意味合いです。確かに鉄道には固定コストがかかります。ですから、地域経済や人口が衰退して行ったら維持はできないし、衰退を前提として新設することはバカバカしいわけです。ですが、鉄道が固定コストであるということを前提に、その鉄道を守っていくような社会のあり方といいますか、衰退に抗する動きの軸になるということもあるのではと思うのです。 3つ目は、日本社会の持っている計画性、定時性といったカルチャーを象徴しているという「無形文化財」的な意味があるということです。特に新幹線に関しては、より定時運行をすることが、安全性、利便性、経済性の向上につながるという「技術の理想型」であるわけで、一つの文明とも言えるわけです。この文明は、守っていく中で、その効果を発揮させていくことに意味があると思うのです。 |
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