先週末から今週にかけ、全国で猛威を振るった台風19号。報道されている被害をまとめると、15日までに3人が死亡、100人前後がけが、1人が行方不明となっています。各地での浸水、交通機関の運休、欠航が相次ぎ、日本中の人々が翻弄されました。今回の19号は、当初、その強大な勢力から「スーパー台風」と位置づけられました。不幸中の幸い、本州に上陸する頃には、勢力が弱まりスーパー台風ではなくなりましたが、それでも九州以南では、強風のため民家が半壊するなど、その激しさを魅せつけました。 スーパー台風とは、最大風速が毎秒65メートル以上の極めて強い台風のことで、米軍合同台風警報センターが用いる台風の階級で最も強いものとされます。最近では、昨年11月にフィリピンを襲った巨大台風「ハイエン」がスーパー台風でした。ハイエンは最大瞬間風速90メートルの猛烈な風を巻き起こし、飛ばされた木材がコンクリート壁を貫くなど、あらゆる物が凶器と化したのでした。さらに、気圧が低下したことや、暴風によって海面が上昇し、まるで津波のように、海岸近くの村々を襲いました。ILO(国際労働機関)の推計では、6,000人を超え、少なくとも1,420万人が影響を受けたとされています。 こうした激烈な気象災害はこの数年間で毎年のように引き起こされていますが、問題はこうした災害が単なる天災ではなく、地球温暖化による影響であるとの見方が強まっていること、そして今後世界の温暖化対策が進まない限り、より深刻なものになるだろう、ということなのです。 最近、地球温暖化の研究者の間で注目されているのが、海の温暖化です。IPCCの第5次評価報告書では、「1971〜2010年において、海洋表層(0〜700m)で水温が上昇したことは、ほぼ確実」「世界規模で、海洋の温暖化は海面付近で最も大きく、1971〜2010年の期間において海面から水深75mの層は10年当たり0.11℃昇温した」と述べています。こうした海の温暖化が気候に与える影響として、筑波大学生命環境系主幹研究員の鬼頭昭雄氏は「温暖化で、蒸発する水蒸気が増えることで、台風が発達するためのエネルギー源が増え、勢力の強い台風が発生すると考えられる」と指摘しています。 気象とは、非常に複雑でまたゆらぎのあるものですが、これまで「数十年間に一度」とされていた激しい気象災害が10年に一度、或いは数年に一度という頻度になってきていることは確かでしょう。台風以外の異常気象も増加している傾向がありますが、これらも温暖化による偏西風の大蛇行が影響しているようです。 東京大学先端科学技術研究センターの中村尚教授は、「日本を含む中高緯度・亜熱帯域の異常気象は、上空を流れる『偏西風ジェット気流』の蛇行に伴って起きることがほとんど」と指摘する。以前、このメルマガでも書いたとおり、北半球の場合、偏西風は赤道側の温かい空気と北極側の冷たい空気の間を帯のように西から東へと流れていますが、温暖化で、赤道側と北極側の温度差が少なくなったことで、その勢いが衰え、真っ直ぐ流れず、蛇行するようになってきています。中村教授は、「北半球で偏西風ジェット気流が持続的に南下した地域では通常より寒冷な空気に覆われて異常低温となる。逆に偏西風ジェット気流が北上した地域では温暖な高気圧に覆われて異常高温となりやすく、夏には干ばつが深刻化する。偏西風ジェット気流が南から流れる所では、下層に暖湿な気流が流れ込んで集中豪雨が起こることもある」としています。ありえない高温や低温、長く続く干ばつや大雨が頻発するのは、こうした偏西風の大蛇行が原因であり、それらの原因にも温暖化が大きく絡んでいるのです。 茨城大学地球変動適応科学研究機関長の三村信男氏は「温暖化の影響を実感する時代にはいった。21世紀というのは、好むと好まざるとにかかわらず、温暖化の中で生きていく時代」と温暖化による危機が既に始っていることを指摘。そして今後はますます異常気象が激しさを増す恐れがあります。名古屋大学地球水循環研究センターの坪木和久氏はこのまま温暖化が進行すれば、風速80メートルを超えるス−パー台風が毎年いくつも襲ってくると警告。九州大学大学院の小松利光教授も「温暖化の進行によって、これから災害が起きる力がかつてなく強まると、私たちの社会システムやインフラの対応がまったく追いつかなる。防災の考え方を根底から考えなおす必要がある」と温暖化対策が急務だと訴えています。 すでに出始めている温暖化の悪影響をこれ以上酷いものにしないために、世界が一丸となって、協力する必要があるのでしょう。 |
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