NEWSを疑え! | | しばし非難の応酬が続くが… 【激論を交わすと見える中国の本音】 | | 今回は、ご参考までに中国人民解放軍の上層部との対話の中身をご紹介しておきたいと思います。数回にわたる異なる相手との対話のから、中国側に共通する姿勢と論理をピックアップしておきます。 とにかく、中国側の言い分は牽強付会、つまり自分に都合のよいように論理を展開するものばかりが目立ちます。 たとえば南シナ海でのベトナム、フィリピンとの紛争。
中国の将軍たち「遠く離れているからといって、中国が領有権を主張できないとするのはおかしい。アルゼンチンと英国が戦争したフォークランド諸島だって、英国本土から何千キロも離れているではないか。あのフォークランド諸島を英国は歴史的に実効支配してきた。南シナ海だって、他の国が航海術などを備えていない時代から、中国は自国の海として支配してきたのだ」
小川「先にやった方が正当性を持つというのであれば、東シナ海に設定した防空識別圏はなんだ。日本ははるか昔に設定していた。中国は昨年11月23日ではないか。それを覆そうとする中国の姿勢を、『力によって支配しようとする姿勢』と言わずに、なんというのか」
中国側「…………」。
小川「外交は国際法の秩序を前提にすべきものだ。尖閣諸島については、国際司法裁判所に行くことで解決を図りたい。日本は100%勝つ。中国も応じるべきだ」
中国側「国際司法裁判所の判事たちが、はたして日本の言い分を認めるだろうか。とにかく日本は、歴史問題を解決していないのだから、国際的な印象はよいとは言えない」
小川「今の中国に対する世界のイメージよりは、日本の方がましかも知れないよ」 このように、しばし非難の応酬が続くのが、何か事件が起きたあとの私と中国側の対話のパターンです。 以上のやりとりをしたときは、南シナ海の話に入る前に、前段の話がありました。中国戦闘機の自衛隊機に対する異常接近事件をめぐる応酬です。
小川「あんなことをすると、2001年の海南島事件の二の舞だ。戦争になるぞ。それに、あの戦闘機は電子妨害でも落とせることを忘れるな」 電子妨害うんぬんは私のブラフですが、かなり険悪な雰囲気になりました。
中国側「自衛隊機が飛んでいたのは中国の防空識別圏内だ。それにロシアとの合同演習は事前に通告してある。自衛隊機はそれを妨害したからスクランブルをかけた」
小川「あそこは日中中間線の周辺で、日本の防空識別圏でもある。中国は昨年11月23日に設定したばかりだが、日本はずっと防空識別圏として管理してきた空域だ。それに海空での軍事衝突ということになれば、緒戦では日本側が圧勝するのは、貴官が中国人民解放軍の将軍なら理解できるだろう。軍艦の5〜6隻が瞬く間に撃沈され、その映像が世界に流れれば、そして中国に日米との本格的な戦争に踏み切る意志がなければ、中国の国際的な威信は地に落ちて、何十年も回復不能となるのは明らかだ」
中国側「日本の強硬論者は、中国は経済格差に対する国民の不満、ウイグルのテロ、環境問題などを抱えていて分裂寸前だと、それを期待するようなことをいう。そういう問題を抱えているのは事実だが、それでも日本との戦争ということになれば国民は一致団結して戦うだろう。日本が歴史問題を解決していないからだ。日本に勝ち目はあるのか」
小川「中国の国民は、日本との戦争をきっかけに中国共産党の政権を打倒する方向に動くかも知れないし、そうでなくとも分裂は加速するかも知れない。団結すると言い切れるのかね。それに、米国から見ると日本列島は中国語で言う『核心的利益』だ。同盟国である日本を守るかどうかではなく、『自国の領土』を守るために中国を軍事攻撃することを忘れてはいけない」 そして、上記の国際司法裁判所に行くか行かないかの話まで応酬が続いたあと、いつものパターンで「引っ越しできない関係」の日中両国が平和と繁栄を実現するために、いま何をすべきかの話になっていきます。 ここでは簡単にしか触れませんが、中国側は「島(尖閣諸島)の周辺では日本に配慮して、武装していない公船しか出していない。南シナ海とは違う。それを理解してほしい。それに南シナ海だって、激しく衝突している一方で、ベトナムとの話し合いは始まっている」と強調し、海上、航空での衝突防止のメカニズムの話し合いを、どのように進めるべきか、意見交換することになりました。 私は言いました。「そのためには、あの戦闘機の異常接近事件についても、『若いパイロットは血の気が多くて困る』とか『風に吹かれて近づきすぎた』という理由でもよいから、事態をそれ以上に悪化させなくてすむような中国なりの『誠意』を見せるべきだ」と、ソ連が1987年12月9日の偵察機Tu16による南西諸島での領空侵犯事件と航空自衛隊のF4ファントムによる警告射撃のあと、機長を降格処分にした例を話しました。 そんなやりとりをしながら、日中首脳会談に向けての環境作りということになり、首脳会談での非難の応酬は両国関係を決定的に悪化させるから、何があっても避けなければならない、ということになりました。 諸課題の解決に向けての取り組みをスタートさせ、それこそ非難の応酬は事務レベル、専門家レベルにとどめるなかで、未来を見据えた首脳同士の会話が友好的に行われるように環境を整えるべき、ということで一致しました。 激しいやりとりのたびに感じるのは、中国は日本との紛争が国家の破綻を招きかねないという危機感、そして特に南西諸島における防衛力強化によって日米から軍事的に圧倒され、海洋における主張を通せなくなるのではないかという危機感を、日本国民が想像している以上に抱いているという現実です。 マスコミ報道だけ見ていると、安倍首相の毅然たる姿勢が中国の反発を招いたり、南西諸島における防衛力の増強が中国の軍事的進出につながりかねない、という受け止め方に傾きがちです。しかし、上記のように専門家同士で厳しい応酬をするなかでしか中国側の本音を知ることはできない、ということを忘れてはならないでしょう。 お互いに発足したばかりの日本版NSC(国家安全保障会議)と中国のNSC(国家安全委員会)という国家の司令塔が接点を持ち、事務レベル、専門家レベルの協議を、それこそ激論を交わすほどの情熱で進めることが、かえって日中両国の間に信頼関係を芽生えさせ、首脳会談実現に向けての効果的な環境作りになるのではないか、という点でも、私と中国側は共通認識を抱いています。 日本の国益を見据えた安倍外交の舵取りに、今後とも期待したいと思います。 | | お試し読みはこちら>> | | | | |
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