原発を再開するかどうかで、国民は大きく二つに別れています。原発再開派は「原発が無いと日本経済は破綻する」と言い、原発反対派は「原発は危険で、貧乏になっても原発はイヤだ」と言っています。 そんな中、2014年5月20日に福井地裁が「大飯原発を再開してはいけない」という判決を出しました。その理由は、福島原発事故を参考にすれば大飯原発は安全とは言えない、ということに尽きます。 これに対して政府は控訴すると言っていますが、日本社会は情緒的ですから、大きな政治問題というのはいつも議論されずに、感情的になって敵対します。それは民主主義が成立する基本的手順である「事実→整理→意見→感情」と進まずに、「感情→意見→作りあげられた事実」、もしくは「誰かの意見→空気→作りあげられた事実」ということになるからです。 原発再開や反対の中には「感情」からスタートしている人も多く、温暖化騒動などは「誰かの意見」からのスタートになっています。でも、これらの手順は「事実を整理したり、話し合ったりしても、意見の統一はできず、かえってこじれるだけ」ということになります。まさに今の日本がそう言う状態です。 そこで、この記事では原発再開について、「事実」を整理して、「合意」に至る道筋を探っていきたいと思います。事実の整理には、次のように進むのが良いと思います。
1)東海第二原発、福島第二の原発の地震後の状態を整理する。 福島第一は「地震で爆発したか、津波が原因か」を明らかにしなければなりませんが、それにはかなり困難が伴い、そこで対立が起きます。その点、東海第二原発と福島第二原発は、津波が来なかったか小さな影響しかありませんでしたので、「震度6程度の地震に対して、原発がどのぐらい破壊されるのか、その後の爆発などの危険は無かったのか」について、より明確に整理が可能であると考えるからです。 現実にも福島第二原発と東海第二原発は、「爆発寸前」までいったと著者は考えています。でも、事実の公表がほとんどされていません。福島第一原発は現実に爆発しましたが、その事実の公表には強い政治的意図が働くことから、「地震か津波か」の見解が分かれると思います。よって、むしろ地震だけの影響を受けた原発の検討が有効でしょう。 世界中で、震度6以上の地震が想定される場所に原発が建設されているのは日本だけ。また実際に震度6の地震に見舞われた原発も、日本にある7箇所だけですから、この問題は日本で解決しなければなりません。
2)原発が危機に陥ったら、爆発を止める事ができるか? 福島原発事故の前まで、「原発を安全に保つ基本」とは、「固有安全性」と「多重防御」でした。「固有安全性」とは、大事故が起こりそうになると原発自体が大事故にならないように動くというものであり、「多重防御」とは何か一つ間違っても、少なくとも3回ぐらい間違わないと事故にはならないシステムを言います。 でも、安全の根幹になっていた(そのように政府も原子力関係者も話していた)この2つが「ウソ」だったのです。もっともウソの中には「故意のウソ」と「ウッカリミス」がありますが、いずれにしても事故の前には、「固有安全性」も「多重防御」も現実には為されていないことを、多くの原発専門家は知っていました。 原発の事故は火災などと違って、「近づけない」ことと「広範囲に被害を与える」ということで、決定的に違います。だから「原発のシステム自身で防御できる」というのではなければダメなのです。よって、従来の「固有安全性」と「多重防御」という基本概念に対して、「それらがなくても安全か」、「二つは必要だから別のシステムで組み込むのか」、または「二つとは違う別の安全概念を作るのか」を検討して、決めなければなりません。 日本は世界一の工業国ですが、その反面で「基本的な概念がない」という弱さもあります。これまで先進のアメリカやヨーロッパが作ってくれた基本概念に基づいて製品を作っていただけなので、今度の原発事故のように世界で初めてと言うことをする覚悟も論理もできていないのです。 ただ、これはきわめて重要な過程で、具体的な活断層とか、震度などより重要でしょう。「何が起こるか判らない」といった謙虚な姿勢での取り組みが求められます。
3)被曝限度を決めることと、事故が起こったからと言って豹変しないこと。 原発事故が起こる前まで、「1年1ミリシーベルト(一般人)」という被曝限度に対しては、誰も異議を唱えませんでした。ところが事故が起こり、現実的に1年1ミリシーベルトという限界を守る事が出来なくなると、1年1ミリシーベルトという限度を決めた専門家自身が「そんな被曝限度はない」と言い出しました。これでは何のために法令で被曝限度を決めていたのか、ということになります。法令で被曝限度を決めていても、事故が起こったら変更し、100ミリシーベルトでも良いなどと言っていたら、限度を定める意味が無いでしょう。 現実的に、福島の方を含めた多くの人が1年1ミリシーベルトを超える所に住み、しかも国が決めている食材からの被曝基準も「食材だけで1年1ミリシーベルト」ということなので、必然的に多くの人が1年で2ミリシーベルト以上の被曝を受けているという状態にあります。 原発事故に驚いた日本社会は、法令を守る気力を失ったように見えますが、もし今後原発を再開するなら、「事故が起こっても絶対に法令を守って、国民の健康を第一にする」ということを再度、確認する必要があるでしょう。それには、もう一度国の委員会を作り、公開で審議し、決定したことを事故が起こったからと言って覆さないと、国民に約束する必要があります。 原発再開派は、事実を隠し、事故の真なる理由も調べず、「経済的に原発を再開したい」とだけ言っていますが、それでは国民が一致協力して原発を存続させることはできません。このことを原発再開派、政府、経済界はよく考えてもらいたいと思います。 |
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