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◆ やぶ医師のひとりごと 第 344号 ◆
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2012年8月24日発行 購読者数 8912名
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＜本日のテーマ＞ 急性心筋梗塞の治療２
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皆さん、こんにちは。
今回から購読して頂いた方、はじめまして。
循環器内科医のDr. Iです。
今日も、元気を出して行きますよ〜♪
本日も「急性心筋梗塞」について。
まずは、前回までの復習。
●急性心筋梗塞とは
○心臓の表面にある心臓に血液を送っている血管
（冠動脈）が詰まって、心臓の筋肉が死んでしまう病気。
○心筋が死ぬので、胸痛の症状が出る場合が多い。
○危険な不整脈が出て、突然死する場合もある。
●急性心筋梗塞の症状
○胸痛が最も多い（７５％）。
○重症の場合は、呼吸困難にばる場合や、冷や汗が出たり、
意識低下、失神、突然死、する場合もある。
○胸痛などの症状が出ない心筋梗塞もある。
●急性心筋梗塞の診断
○問診
○心電図、血液検査
○心臓超音波（心エコー）
○心臓カテーテル検査（冠動脈造影）、など
●急性心筋梗塞の原因
○年齢（高齢）、喫煙（タバコ）
○糖尿病、高血圧
○脂質異常症（高脂血症）
○家族歴、など
●急性心筋梗塞の治療
○心臓カテーテル治療
心臓の血管（冠動脈）までカテーテル（チューブ）を持っていき、
詰まっている血管のところで風船のような物を広げて、
血管を広げるような治療。
○点滴、飲み薬
○酸素投与、など
心臓は血液を体中に送り出すポンプの役割をしている臓器で、
その表面には冠動脈という血管があります。
冠動脈が詰まると心臓に血液や酸素がいかなくなって
心筋が死んでしまうので、胸痛という症状が出ます。
これが、急性心筋梗塞です。
心筋が死んでしまいますから、
胸がずーっと痛くなるのが特徴的です。
でも、高齢者とか糖尿病なんかで、神経が鈍くなって
痛みがわかりにくい人は、胸痛がない人もいます。
急性心筋梗塞の原因というのは、いくつかあって、
年齢が高くなれば当然なりやくなるんですけど。
それ以外に、タバコを吸っていたり、糖尿病や高血圧、
脂質異常症などの病気があると、動脈硬化が進んで
急性心筋梗塞になりやすいんですよ。
そいで、急性心筋梗塞や狭心症の診断をするのに
最も大事なのは問診で、それ以外で重要なのは心電図。
そして、血液検査や心エコーなんかも使って、最終的には
心臓カテーテル検査で診断する事になります。
心臓カテーテル検査まを行い、急性心筋梗塞だ、
って診断したら、そのままカテーテル治療を行います。
でも、緊急の心臓カテーテル検査というのは、
施設によって出来るとこと出来ない所があるので、
それまでに点滴とか飲み薬の治療もしますよ、
っていう話でしたね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そいじゃあ、本日も心筋梗塞について。
今日も、「急性心筋梗塞の治療」についてです。
●急性心筋梗塞の治療２
先週は、急性心筋梗塞になったら、緊急で
心臓カテーテル治療をやって、詰まった血管を広げて
血液を流す治療をするのが大事だよ。
という話でしたね。
そいじゃあ、今日は心臓カテーテル治療で
血管を広げた後、どんな治療をするのか。
もしくは、カテーテル治療が出来なかった人、
しなかった人はどんな治療をするのか、
という事について書いていきますね。
○内服治療
▲血液を固まりにくくする薬
急性心筋梗塞になったら、心臓に行く血管が詰まって
心臓にダメージが与えられるから、それを最小限にする為に
心臓カテーテル治療をして、血管を広げる。
これが、治療の王道になります。
でも、それだけでは不十分なんですよ。
血管で広げた後にも補助的な治療が必要なんです。
一番重要なのは、心臓の血管（冠動脈）を広げた場合、
ほとんどの場合「ステント」という金属性の筒
みたいやつを入れて、狭くなるのを防いでいるんですけど。
これって、「金属」ですからね。
血管の中に金属が入って、そのまま薬も飲まずに
放っておくと、そこに血液の塊がくっついて、
また血管が詰まってしまう事があるんですよ。
こういうのを、「亜急性ステント血栓症」、英語で言うと
subacute stent thrombosis（SAT：サット）と呼びます。
せっかくステントを入れて心臓の血管を入れたんだけど、
また詰まっちゃうんですよ、これ。
亜急性期っていうのは、だいたい１週間とか１か月とか、
長くもないけど短くもない、っていう期間の事です。
心臓の血管が詰まるって事は、簡単に言うと、
もう一回心筋梗塞になる、という事ですから。
下手すると、死んでしまう事もある重大な事態なんです。
こうなってしまったら大変ですよね。
血液が固まって心臓の血管が詰まるので、
血液が固まりにくくする治療っていうのを行います。
血小板って聞いた事ありますか。
ケガとかして、血が出た時に血を固める役割を
しているのが血小板なんですけど。
この血小板の作用を抑える治療をすると、
血管がまた詰まるのを防ぐ事が知られています。
だから、心臓カテーテル治療が終わってステントを入れたら
必ず「抗血小板薬」という血液が固まりにくくなるような
薬を飲んでもらいます。
一種類だけだと不十分なので、基本的には２種類飲みます。
ステントの種類って、実はいくつかあるんですけど、
マニアックになるので詳しくは書きません。
最新の治療では、抗血小板薬はステントの種類にかかわらず、
原則１年間は抗血小板薬を２種類飲む、
という事になっています。
▲心臓（心筋）を保護する薬
心筋梗塞になると、心臓の筋肉の一部が死んでしまいます。
でも、心筋梗塞になった後でも、普通に生活をするために、
心臓は動いて体中に血液を送り出す必要があります。
一部の心筋が死んでしまっている訳ですから、
逆に言うと、他の心筋には負担がかかっちゃうんですよ。
死んだ心筋の分まで頑張らないといけないですからね。
そうなると、心臓が疲れちゃうんですよ。
だから、心臓の働きを少し抑えてあげる、
もっと簡単に言うと、省エネで心臓に動いてもらう、
というような飲み薬があります。
これ、「β─blocker（ベーターブロッカー）」という
薬なんですけど、降圧薬（血圧を下げる薬）の一種です。
心筋梗塞になった後、この薬を飲むと長生きする、
という事が明らかになっていますので、心筋梗塞になった人は
原則的にこの薬を飲んでもらいます。
それと、「ACE（エーシーイー）阻害薬」という、
これも降圧薬の一種なんですけど。
この薬も、心筋梗塞の後に飲むと長生きできる、
っていう事が言われているので、基本的には
この薬か、それと似た系統の薬「ARB」を飲んでもらいます。
ただし、どっちの薬も降圧薬なので、
血圧が低い人には使いにくいんですよ。
血圧が下がってしまいますから。
ですので、血圧を見ながら少ない量だけ飲むとか、
片方だけ飲んでもらう、とか工夫が必要になる場合もあります。
▲コレステロールを下げる薬
血圧が高い、血糖値が高い、コレステロールが高い。
これらがあると、心筋梗塞になりやすいんですけど。
コレステロールを下げる薬の中でも、スタチン系
というタイプの薬を飲むと、心筋梗塞にもう一回なりにくい、
長生きできる、という事がわかっています。
ですから、コレステロールが高い人は当然ですけど、
そんなにコレステロールが高くない、っていう人でも
基本的にはスタチン系の薬も飲んでもらいます。
ただし、あまりにもコレステロールが低い人に
更に下げる薬を飲ませるのか、っていう問題もあるので、
中には飲まない人もいますよ。
○禁煙
タバコをすっていれば、心筋梗塞になりやすいので、
今まで吸っていた、という人の場合は、
絶対にその場で禁煙してもらいます。
急性心筋梗塞の死亡率って、昔は２０％とか３０％、
という風に言われていたんですけど。
今は、だいたい５−１０％程度、と言われています。
まあ、これはあくまで、緊急で心臓カテーテル治療ができる
ような施設に入院した場合の話ですけどね。
急性心筋梗塞で亡くなる人の半分くらいは、
病院にたどり着く前に亡くなる、と言われていますから、
厳密には何％、と言う事はできません。
んで、心筋梗塞に２回目になった人の死亡率は、
だいたい死亡率が２倍になる、と言われているので、
おおざっぱに言うと、死亡率１０−２０％位、になります。
心筋梗塞に１回なった人で最も大事な事は、
もう一回心筋梗塞にならないようにする、という事です。
そのためにも、タバコを吸っている人は禁煙する、
という事が非常に重要になります。
○食事・運動療法
高齢者で家族も心筋梗塞になりやすい家系、
っていう人の場合は、他に生活習慣病がなくても
急性心筋梗塞になる、という場合もあります。
でも、たいていの場合は、高血圧とか、糖尿病、
脂質異常症のどれか、もしくは複数の病気を持っています。
これらは、生活習慣病、と言われるような病気ですから、
生活習慣を改善する、という事がとても大事です。
急性心筋梗塞の治療って、昔は安静にしているだけ、
という事しかなかったんですけど。
今は、全然違う治療になっています。
なるべく早く血管を広げて、なるべく早く
心臓リハビリテーションをして、動いてもらう、
という事も大事になっているんですよ。
そして、当然の事ながら塩分を制限したり、
カロリーを制限する食事にして、生活習慣を改める、
という事も同じくらい重要になります。
そんな訳で、本日「急性心筋梗塞の治療」についてでした。
そいじゃあ、今日はここまで。
いつものように、下にまとめを書いておきまーす。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【今日のまとめ】
●急性心筋梗塞の治療２
○内服治療
▲血液を固まりにくくする薬
▲心臓（心筋）を保護する薬
▲コレステロールを下げる薬
○禁煙
○食事・運動療法
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
急性心筋梗塞になった人で重要な事は、
もう一回心筋梗塞にならないようにする、って事です。
そのために、食事・運動療法をしたり、禁煙もする。
そして、必要な薬はきちんと飲む、って事ですよ。
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