山崎和邦 週報『投機の流儀』 | | 自民の公約は「景気回復、この道しかない」 【安倍内閣、景気後退は自ら認めている】 | | キャッチフレーズに「景気回復」と言うのだから「景気後退は自ら認めている」ことになる。旧・経企庁の昔から4半期GDPが2期連続マイナスなら景気後退だとしてきたから、今さら言い逃れはできない。 また、「この道しかない」と言うのだから、「第3の矢」も充分に説明できなければならない。野党側を彼らが苦手の経済の土俵に登らせて戦おうという戦術は自民にとって有利としても、票田に晒すと不都合な問題を小さく見せようという手はあまりにも見え見えである。 憲法改定については、自民の宿願であり安倍さんの祖父の代からのDNAであるのに、末尾に「国民の理解を得つつ」という飾りを含めて4行だけしか触れてない。 原発再稼働に注目を集めたくないから「エネルギーミックス」なる新語を開発して「その将来像を速やかに示す」と軽くイナシテいる。要するに経済問題以外のことで国論を真っ2つに割って叩きあうようなテーマは軽く述べるにとどめて、中心話題にしない方針である。 善し悪しは別として、「(敵の)備えなきを攻める」と「孫子」の言う通りに解散の時期の旨さ、戦い方の巧みさ、キャッチフレーズの一見正直さ(景気後退を自ら認めて議論を避ける)、そのくせ「この道しかない」というヒットラー顔負けの断定のキレの良さ、到底、玄人政治家の図面師には素人政治家の民主党は敵わない。 ここで考えるべきことは選挙の票田は60歳以上が増えているということだ。人生の後半になるとどうしても保守的になる。そこを狙って麻生さんは首相時代に「自民党こそ真正保守である」と主張したが旨く行かなかった。今度は表現を全く変えた。自民が過半数を取ることは自明だが、議席数は減る恐れはある。我々の感覚と少々違う海外投資家がどう出るか、いまのところ分からない。 わからないときは(優柔不断で行動しないのではなく)断固とした意思の所産として何もしない、これが筆者流である。人にはそれぞれ流儀がある。筆者流が最良とは言わない。見方によれば最悪かもしれない。好機を逸しているのかもしれない。が、優柔不断によるものでなく、意思の所産なればそれでいいのだ、と思っている。 過去、十数年のデフレ期間に日本は株式時価総額だけでも300兆円も喪失した。ノルウェイ、デンマーク級の国家が3つ、4つ消滅したことになる。日本国民は無責任な評論家稼業の連中の無責任な知的ファッション(筆者から見たら実に幼稚で醜いファッションだったが)に巻き込まれて、「成長無用論」「くたばれGDP」に汚染された。特に朝日新聞系、毎日新聞系はそれを正論としてきた。 そして高い授業料を払って、長い時間を要してそれが間違いだと気がついた。成長なければ財政再建なし、成長なければ社会保障の原資も出ないと。当たり前ではないか。カネはどこから出ると言うのだ。 成長こそ第一なのだ。富める者にも、貧しい者にとっても、だ。 そこで本稿では、安倍内閣発足時から言ってきた(「第1の矢」「第2の矢」は日銀と財務省がその気で動けば実現するが)。「第3の矢」は民間発だから簡単ではないと。 政府・行政が政策としてやれることは民間がそれをやり易くするための後押しと邪魔者排除をするだけだ。また、成長と言うものには率直に言ってマグレもある。運もある。ときの為政者との好取組もある。 筆者は世の成長物語を読み漁った十数年間の期間があったが、そういうことをしみじみ感じた。 さて、第3次安倍内閣の死命を制するものは本当は憲法だし、集団的自衛権だが、今は違う。 その是非・賛否はここでは措くとして、安倍さんがその宿願をいずれは成したいなら、まずは日本経済を成長路線に乗せることだ。それができなければ安倍さんの隠れたホンネ(祖父から受け継いでいる宿願)もできませんぞ、と言ってやりたい。無論、本人は承知しているだろうから選挙中はホンネは一言も言わないであろう。 | | お試し読みはこちら>> | | | | |
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