2014年12月11日木曜日

福島の復興を見守る憩いのカフェテラス、震災後50日を迎えた被災地を振り返る、会津の田舎そばで年越しを【東北まぐ】

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東北まぐ41号 2014年12月
東北まぐ
横山不動尊の境内(宮城県登米市)
はじめに
震災の起こった年の4月。
牡鹿半島の十八成浜くぐなりはまで出会った白髪の男性が、カメラを持った私に向かって声をかけてくれました。「あんた、記者さんかい?」と切り出したその男性は、基礎しか残っていない自宅跡を片付けながら「私らだけだとどうにもならんけど、日本中のあちこちから手伝いに来てくれる人がいて、助かっているよ」と話してくれました。彼は別れ際「記者さん、いろんな人の話をたくさん聞いて、県外の人によく伝えてくださいな」と、見送ってくれました。

この時の体験は、「一人でも多くのひとが、東北の地を訪れることで、復興に向かう町の大きな力になる」という、私の確信につながりました。あれから3年半。傷ついた町は復旧を終え、ようやく復興に差し掛かろうとしています。そして、予想したよりもずっと早いペースで災害と事故の記憶は薄れつつあります。町が力を取り戻し、人々の暮らしが安定するには長い年月がかかり、多くの人たちの協力が不可欠です。だからこそ、東北まぐでは、被災地に暮らす人とそこに関わる人々の声を届けつづけています。

みなさんが、東北に足を運ぶきっかけとなることを願って。
東北まぐ、第41号をお送りいたします。
行ってきました東北 〜福島県湯本編〜
カフェテラス“サーフィン”
行ってきました東北
アンティークやこだわりのインテリアが目を引く店内。「内装もすべて、私がやりました」と笑う、オーナーの鈴木富子さん。
福島県いわき市の薄磯海岸に、31年間続くカフェテラスがありました。
「サーフィン」と名付けられたこの店は、海を臨む気持ちのいい立地と、アンティークに彩られた居心地のいい店内が評判で、地元はもとより県外から来る人たちにも愛されていました。この店のオーナー鈴木富子さん(61)は、27歳の時に薄磯海岸で「サーフィン」をオープンしました。それまで洋裁の仕事をしていた富子さんが突然飲食店を始めた理由について、彼女は「子どもたちが"お母さんただいまー"って、学校から帰ってくる姿を毎日見たかったから」と振り返ります。

お客さんたちが店でコーヒーを片手に、まるで自宅でくつろぐかのように本や新聞を読む姿を見て、富子さんはこの店を始めて良かったと感じていました。窓辺で、恋愛小説を一生懸命読むお客さんを見て、密かに「もし、このお客さんも恋愛をしているなら、うまく実るといいなぁ」と心の中で応援したり、新聞の経済欄を熱心に読む男性をみて、「この人は、どんな仕事をしているのだろうか?たまには、ゆっくり休んでくださいね」と願いながら、コーヒーを淹れていました。

2011年3月11日の津波で、自宅と店が壊れてしまい、震災以降は近くの避難所に身を寄せていました。それまで毎週楽しみにしていたテレビ番組を、体育館のテレビで大勢と一緒に見ていると「どうして私はこんなところで、冷たい木の床に座ってテレビを見ているのかしら。暖かい、自宅のソファーでゆっくりと見たかったのに…」と不思議な気持ちになりました。我にかえり「そうか、もう自宅の2階に、いつもの暖かいソファーはないんだった」そう思うと、涙がとまらなくなりました。

しばらくたち、富子さんは「もう一度店をやろう」と、店舗の再建に乗り出しました。建物の建築に制限がかかった薄磯海岸での営業再開は断念。かわって、自身の出身地である湯本地区に場所を借りて、2012年に入って新しい「サーフィン」をオープンしました。
「プレハブの仮設店舗でやらないかという話もあったけど、それだと震災前のサーフィンを気に入ってくれたお客さんに申し訳ないから」と話す富子さんは、「ゆっくりと、心からくつろいでもらえる場所にしたかったんです」と、湯本での再オープンの理由を話してくれました。
再開したサーフィンから、海は見えなくなってしまいましたが、常磐線の「常磐湯本駅」から近いこともあり、これまでのお客さんとともに、震災後にサーフィンの事を知ったお客さんも、お店に足を運んでくれるようになりました。

「この店の中だけ、別の時間が流れているようでしょ」と話すお客さんの一人は、「何か考え事をしたいときとか、リラックスしたいときには、ここに来るんです。東京に行かなくても、近くにこんなお店があるんでありがたいですね」と笑います。

長年積み上げてきた多くのものを失い、失意にあった富子さん。それでも「もう一度、お客さんにくつろいでもらえる場所を提供したい」という熱意が富子さんを突き動かしました。

帰り際、「実はね」という富子さんが「今、入っている湯本のこの建物も、近いうちに老朽化で取り壊しになるんです。この場所も、もしかしたら長く続けられないかもしれない」と話してくれました。「でもね」と富子さんは顔を上げ、「自分の力だけではどうにもならないことも、人の助けを借りることで、乗り越えられることを知った。今は不安よりも、なんとかなるという安心がある」と話してくれました。彼女には「私はもうこれ以上悲しみたくない。だから、これからの人生は楽しいことで思い出を埋めていきたい」という、強い思いがあります。
店先まで見送りに来てくれた富子さん。「なすがまま、店の名前のように、いい流れに身を任せて進んでいこうと思います!」と、手を振ってくれました。
岸田浩和
行ってきました東北
店内のインテリアや販売されている小物は、すべて富子さんが集めた、こだわりの品。

行ってきました東北
評判の美味しいコーヒーや、ケーキメニューがおすすめ。
ランチには、パスタメニューも人気だ。

行ってきました東北
湯本地区に再オープンした「サーフィン」の外観。

Information
● カフェサーフィン

福島県常磐湯本町天王崎26
TEL:0246-43-0381
毎週月曜・日曜休
10時〜18時ごろまで(LO 17:00)
東日本大震災・写真レポート
「50Days」
東北まぐが創刊された2011年8月から遡ること3ヶ月半。
私は、震災から50日を経た宮城と福島の津波被災地域に向かっていました。

はじめて見た信じがたい破壊の痕跡に言葉を失い、カメラを持ったまま全ての思考が停止し呆然と立ち尽くしてしまいました。女川を皮切りに、南三陸町へ北上してから沿岸部を南下し、石巻市を経て南相馬市まで南下しました。約1週間の道中で、訪れた町ごとに多くの人たちの声に耳を傾けました。

1週間の取材を終える頃には、圧倒的な破壊の光景よりも、がれきの中で立ち上がり再起に向かう人々の「熱」に衝撃を感じていました。被災地に暮らす彼らの声を伝えることで、多くの人々に復旧や復興の熱に加わってもらえないだろうか。そうすることで、微力ながら県外の私たちも、彼らと共に歩むことができるのではないだろうかと考えるようになりました。

東北まぐ創刊の原点ともなった当時の取材を振り返り、震災後50日を迎えた東北沿岸部の町で見た光景と人々の声を、あらためてお伝えしたいと思います。

ウルトラシャルソン
2011年4月下旬。深夜の東北道を北上し、明け方に女川町に到着した。町立病院の駐車場に車を止め、夜明けを待つ。陽がさすとともに、町の全容が見え始めた。原形をとどめたモノが何も残っていない。外国人記者と二人、カメラを持ったまましばし言葉を失った。

ウルトラシャルソン
町の中心部だったあたりに立つ。瓦礫によじ登って歩いていると、足元から海水が上がってきた。満潮が近づくにつれ、海の近くは水浸しになった。

ウルトラシャルソン
海岸線から数100メートル内陸に入った丘陵の墓地。丘の中腹に、石巻線の車両が流されていた。なぎ倒された墓石の幾つかには、新しい花が添えてあった。

ウルトラシャルソン
牡鹿半島の十八成くぐなり地区。自宅と車を流され、一時は仙台の親戚の家に身を寄せた永浦さん。しかし、数週間するとここに戻ってきた。戻った理由をきくと「壊れちゃったけど、俺の家はここだから」とはにかむように答えてくれた。嫁いだ娘さんが心配だからと携帯を渡してくれたが「耳が遠くて、あんまり聞こえないんだよ」という。戻ってからは、自宅跡の瓦礫を片付けるのが日課になった。

ウルトラシャルソン
瓦礫を除けると、軒下から背広が出てきた。「自分の物が見つかると、何だか嬉しいね」。
(次号に続く)

写真/文・岸田浩和
今月のお取り寄せ
会津の田舎そば 410
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1人前100gの束が3つ入っています。この色も田舎そばの魅力です。

今月のお取り寄せ
年越しそばに最高!ぜひお取り寄せしてみてください!
東北まぐ編集部
イチオシの理由は?

2014年もあっという間にもう年末ですね。ということで、今回は少々早いですが年越しそばにピッタリの「会津の田舎そば」をご紹介致します。
こちらのおそば、「田舎そば」というだけあって、黒くてちょっと太めの素朴な風合いが特徴。今回は年越しそばということで温かくして頂きました。
一口すするとふわっと感じられるおそばの香りが良いですね。乾麺でありながらしっかりとした風味があり、田舎そば独特の歯切れの良い食感も楽しめます。いわゆる、更科そばとは違うため、のどごしが魅力という訳ではありませんが、どこか郷愁をそそる落ち着いた美味しさを感じました。まさに今年を締めるのにふさわしい一杯と言えるのではないでしょうか。
2014年も残すところあと少し。来年はさらに震災復興が進むことに期待しつつ、本稿を締めたいと思います。来年も当コーナーでは東北の美味しいお取り寄せをどんどんご紹介していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 

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会津製麺
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【東北まぐ】 2014/12/11号(毎月11日発行)
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