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◆ やぶ医師のひとりごと 第 315 号 ◆
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2012年1月27日発行 購読者数 9356名
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＜本日のテーマ＞ 変形性膝関節症の治療
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皆さん、こんにちは。
今回から購読して頂いた方、はじめまして。
循環器内科医のDr. Iです。
今日も、元気を出して行きますよ〜♪
「変形性膝関節症」について。
まずは、先週までの復習。
●変形性膝関節症とは
○膝の関節が痛くなって、最終的には変形する病気。
○日本に約７００万人も患者がいる。
●変形性膝関節症の症状
○初期の症状
▲立ち上がる時とか、体重をかける動作の時に
「膝の違和感」や、「膝の痛み」が出る。
▲しばらく休むと膝の痛みがなくなる事が多い。
▲更に進むと、階段昇降時や平地歩行でも痛みが出る。
○中期の症状
▲痛みがはっきりと自覚できるようになり、
膝の曲がりが悪くなる。
▲しゃがむ、正座をする、という動作がつらくなる。
▲更に、炎症が進むと膝の周囲が腫れ、熱を持つようになる。
○末期の症状
▲更に痛みがひどくなると、日常生活に支障が出る。
▲膝をかばって動かさなくなると、
膝関節の可動域が制限され、関節の拘縮が起こる。
▲外見的にも関節の変形が目立つようになる。
●変形性膝関節症の種類と原因
○一次性変形性膝関節症
ケガや病気等、はっきりとした原因はない場合。
変形性膝関節症の９割を占める。
▲一次性変形性膝関節症の危険因子
□加齢、女性
□筋肉の衰え、肥満
□膝への負担の大きいスポーツの習慣
□Ｏ脚（おーきゃく）や偏平足など足部の変形
○二次性変形性膝関節症
原因となるケガや病気がある変形性膝関節症。
▲二次性変形性膝関節症の危険因子
□膝周辺の骨折による関節軟骨の損傷
□靭帯損傷、半月板の損傷
□膝蓋骨の脱臼、ねんざ
□慢性関節リウマチ
□痛風、偽痛風（関節軟骨石灰化症）、など
●変形性膝関節症の診断、検査
○問診（もんしん）
○視診（ししん）、触診（しょくしん）
○膝のレントゲン写真
○関節液検査、血液検査
○MRI、CT
「変形性膝関節症」というのは、その名の通り、
膝の関節が変形してしまう病気の事です。
年月が経つほど、徐々に関節に負荷がかかって、
膝の痛み等の症状が出て、最終的には変形していまいます。
変形性膝関節症の具体的な症状ですけど。
最初のうちは、膝の違和感とか、動いた時だけ膝が痛む、
というような感じが多いです。
だんだん重症になると、痛みも強くなり、膝の曲がりも悪くなり、
膝が腫れたり、膝に水が貯まったりする事もあります。
更に進むと、膝関節が変形したり、動きにくくなります。
そいで、変形性膝関節症のほとんどが、ケガや病気等、
はっきりとした原因はない一次性変形性膝関節症です。
高齢者や女性、肥満、Ｏ脚、筋肉の衰え、
膝への負担の大きいスポーツの習慣、などがあると、
変形性膝関節症になりやすくなってしまいます。
変形性膝関節症の診断は、基本的には問診、触診、視診と
膝のレントゲン写真なんですけど、場合によってはCTや
MRIを撮る事もあるよ、って話でしたね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
それでは今週も、「変形性膝関節症」について。
本日は、「変形性膝関節症の治療」についてです。
●変形性膝関節症の治療
変形性膝関節症っていうのは、膝の関節軟骨がすり減って、
膝の違和感や痛みが出たり、変形してしまう病気です。
一度すり減ってしまった関節軟骨が元通りに戻る、
という事は、残念ながらないんですよ。
だから、変形性膝関節症の治療というのは膝の痛みを取る事。
そして、膝が曲がりきらない、伸びきらない、という状態を
改善して膝の機能を高める事を目指して行います。
変形性膝関節症の治療は一般に、生活指導、理学療法、
そして薬物療法の３つが中心になります。
これらの治療は保存療法と呼ばれます
保存療法でも改善しない、重症の膝関節症に対しては
手術による治療が行われる場合もありますよ。
では、それぞれについて、内容を見ていきましょうか。
○生活指導
▲減量
体重が多い方が、膝の負担が大きくなりますよね、当然。
だから、変形性膝関節症の人で体重の多い人は、
体重を減らしてもらう、というのが基本になります。
普通、ダイエットと言えば、食事と運動なんですが。
膝が悪い人は膝に負担のかかる運動をすると、
余計悪くなっちゃいますから。
食事療法が基本で、運動は水泳とか水中ウォーキングとか、
なるべく膝に負担のかからない運動を行ってもらいます。
▲杖を使う
長い時間歩くと、膝に負担がかかっちゃうんですよね、どうしても。
なので、そういう時は杖を使うようにしてもらいます。
▲正座を避ける
正座のように膝を深く曲げる状態というのは、
膝に負担がかかってしまうんですよ。
だから、基本的に正座はしない方が良いです。
それと、できればトイレも和式よりは洋式の方が良いです。
まあ、今の家は和式便器の方が少ないとは思いますけどね。
○理学療法
理学療法には運動療法と温熱・冷却療法があります。
▲運動療法
運動療法は、変形性膝関節症の悪化を防ぎ、
痛みを軽減させるもっともよい方法です。
でも、効果が現れるまで、ある程度時間がかかるんですよ。
治療の目的は、痛みのためにあまり使っていない膝を、
将来にわたって使えるように治すことです。
膝を使うために治すんですから、
まず膝を動かす筋肉を手入れすることが重要です。
中心となるのは、この３つのトレーニングです。
１、太ももの筋力アップ
膝を安定させる太ももの筋肉が弱ってくると、
膝の負担が増えて、変形性膝関節症になりやすくなります。
逆に太ももの筋力を増やすと膝の負担を減らすことができます。
だから特に、太ももの前側の筋肉「大腿四頭筋」を
鍛える訓練というのを中心に運動療法を行います。
また、膝を適度に動かすことで膝の痛みを和らげ、
炎症を抑えることができます。
２、ウォーキング（歩行習慣）
走るのは膝に負担がかかるので、ウオーキングを習慣にして、
痛みの出ない範囲で膝を使いながら筋肉をつけてもらいます。
３、ストレッチ
膝の可動域（動く範囲）を維持するために
ストレッチング（柔軟体操）を行うの事も大事です。
体を動かすと血流が良くなるので、
膝周辺の組織にも栄養が行き渡り老廃物が排泄されて、
膝に水が貯まりにくくなるんですよ。
血流が良くなると軟骨細胞の新陳代謝も良くなるので、
細胞が活性化して軟骨が再生されやすくなる、
とも言われています。
膝に負担の少ない、水中ウォーキングとか、
水泳や自転車こぎ、なんかの運動なんかも行われますよ。
膝が不安定な人は、支柱付きの膝のサポーターや
足底装具といったものを付けて行う場合もあります。
あと、上でも書いた通り、運動すると体重減る事も多いので、
そういう意味でも膝には良いですね。
▲温熱・冷却療法
その名の通り、暖めたり冷やしたりする治療です。
一般的に、慢性期の痛み（ずーっと続いているような痛み）
の場合は、暖めるのが効果的なので、変形性膝関節症でも
膝を温める治療を行います。
具体的には、温泉やお風呂に入って暖めるとか、
ホットパックや温湿布を使って暖めます。
逆に、ぶつけた後すぐとか、膝が熱っぽくて腫れているような
場合には、冷やす治療「冷却療法」を行います。
暖めた方が良いのに冷やしたり、逆に冷やした方が良いのに
暖めたりしたら、逆効果になっちゃいますから。
膝関節症の人は、主治医の先生と相談してからやって下さいね。
超音波による深部温熱療法とか、そういう治療もありますけど。
細かい事なんで、覚える必要はありませんよ。
ちょっと長くなっちゃったんで、今日はここまでにしましょうか。
そんな訳で本日は、「変形性膝関節症の治療」についてでした。
そいじゃあ、今日はここまで。
いつものように、下にまとめを書いておきまーす。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【今日のまとめ】
●変形性膝関節症の治療
○生活指導
▲減量
▲杖を使う
▲正座を避ける
○理学療法
▲運動療法
１、太ももの筋力アップ
２、ウォーキング（歩行習慣）
３、ストレッチ
▲温熱・冷却療法
慢性期の痛みは暖めて、急性期の痛みは冷やす。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
変形性膝関節症の治療は、来週も続けてやりますけど。
大事なのは、今日やった事ですからね。
手術とかは特殊な場合で、基本は減量して運動療法。
そして、痛みが強いなら痛み止め、という形になります。
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