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◆ やぶ医師のひとりごと 第 358号 ◆
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2012年12月7日発行 購読者数 8758名
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＜本日のテーマ＞ 心房細動の種類と治療
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皆さん、こんにちは。
今回から購読して頂いた方、はじめまして。
循環器内科医のDr. Iです。
今日も、元気を出して行きますよ〜♪
「心房細動」について。
まずは、前回までの復習。
●心房細動とは
○心房がぶるぶる震えているだけで、
ほとんど役に立っていない状態の不整脈。
でも、心房は心臓の役割の２割しか果たしていないので、
それだけですぐに命に関わる事はない。
○心房の動きの一部しか心室に伝わらないため、
心室の動き（拍動）は、不規則（不整）。
●心房細動の症状
○脈が乱れる、脈が不整、脈がばらばら
○動悸、ドキドキする
○息が苦しい、胸が苦しい、
○めまい、頭がぼーっとする 等
○心房細動が続いている場合は、無症状の事も多い。
●心房細動で困る事
○心不全
心臓の機能が低下する状態。
息切れや、体のむくみ、呼吸困難等の症状が
出る場合もある。
○脳梗塞
心房の中で血液の流れが滞って、血の塊（血栓）が出来て、
それが頭（脳）に行く血管で詰まって、
脳細胞が死んでしまうと「脳梗塞」になる。
心房細動というのは不整脈の一種です。
具体的には、心臓の中の心房が正常に機能していなくて、
心房の動きの一部しか心室に伝わらないので、
脈が不整になるような不整脈です。
脈が乱れるような不整脈なので、心房細動の症状は
脈が乱れるような感じとか、動悸がしたりします。
心房細動が続いて慣れちゃうと、全く症状がない、
という場合も多いです。
症状がないから良いか、というとそんな事はなくって、
心房細動になると、心臓の８０％位しか機能していない
という事なので、心不全になりやすくなってしまいます。
心房細動で最も困る事は、心房の中で血液が滞って、
血の塊（血栓）が出来て、それが脳に行く血管で詰まって、
脳梗塞になり易くなっちゃうよ、って話でしたね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そいじゃあ、本日も「心房細動」について。
今週は、「心房細動の種類と治療」についてです。
●心房細動の種類
「心房細動の種類」って一言で言っていますけど、
実は種類があって、大きく３つに分けられます。
（１）発作性（一過性）心房細動
一時的に心房細動になるもの。
もっと具体的に言うと、７日以内に自然停止するもの。
（２）持続性心房細動
７日以内に自然停止しない心房細動。
（３）慢性心房細動
半年以上ずーっと心房細動が続いているもの。
の３種類です。
発作性（一過性）っていうのは、言葉の通り。
一時的になるもの、っていう事です。
通常は、心臓っていうのは「洞調律」というリズムで、
規則正しく拍動しているんです。
それが、「一時的に」心房細動になるのが、
（１）発作性（一過性）心房細動
です。
心房細動という不整脈は、年齢が高くなって
心臓が衰えてくると、だんだんなりやすくなってくる。
そういう不整脈なんですよ。
もちろん、若いのに心房細動になる人もいますけどね。
そいで、一時的に心房細動になって、またしばらくしたら、
正常の洞調律に戻る、とかっていうのを繰り返していると、
だんだん心臓が衰えてきちゃうんです。
そういう経過を繰り返していると、
何年も経って歳もとりますしね。
そうなると、以前だったら一時的に心房細動になっても、
自然に洞調律という正常の状態に戻っていたけど。
いつのまにか、「ずーっと心房細動」、
という状態になってしまう事があります。
こういう「ずーっと心房細動」の事を、
（３）慢性心房細動
と呼びます。
慢性っていうのは「ずーっと」っていう意味だ、ってのは、
慢性心不全とか、別の病気の時も勉強したんですけど、
覚えているかな。
ずーっとなっている訳ではないんだけど、
結構長い間（７日以上）続いているような
心房細動の事を、最近では
（２）持続性心房細動
と呼ぶ場合もあります。
他にも、脈の速さで分類する方法とか、
他に病気があるかないか、って事で分類する方法もあるけど。
まあ、細かい事は良いでしょう。
●心房細動の治療
先週も書いたとおり、「心房細動で困る事」は、
「心不全」や「脳梗塞」になる事ですから。
「心房細動の治療」というのは、心不全や脳梗塞に
ならないようにする事がメインになります。
もちろん、心房細動になったら、ドキドキしたりとか
症状が出て困る事もあるんで。
そういう風にならないように、
っていうのもあるんですけどね。
そいで、心房細動には３種類あるんだけど、
全ての種類の心房細動で最も重要な治療が、
脳梗塞にならないように予防する、という治療です。
「心房細動」があると、心房の中の血液が滞って、
血液の塊（血栓）が出来やすくなります。
そして頭（脳）に行く血管で、血の塊（血栓）が詰まって、
それで脳細胞が死ぬ病気、脳梗塞になり易くなっちゃいます。
そいじゃあ、「脳梗塞」を予防するために、
どうすれば良いのか、っていうと。
＞心房細動になると、心房の中の血液が滞って、
血液の塊（血栓）が出来やすくなります。
これを、なんとかすれば良いんですよ。
血が固まって、血栓が出来るんですから。
「血液を固まりにくくする」という事が治療になります。
巷で言う「血液サラサラ」って事でしょうかね。
一般の人たちが使っている「血液サラサラ」とは、
全然レベルが違うんですけどね、本当は。
まあ、この際、細かい事は良いでしょう。
血液をサラサラにするっていうか、血を固まりにくくする薬。
というのは、結構たくさんあります。
それに、食べ物なんかを加えると、膨大な量になります。
「心房細動の場合に脳梗塞を予防できる」という事が、
はっきり証明されている薬で有名なのは、
「ワーファリン」という薬です。
「ワーファリン」は昔から使われている薬で、
心房細動の人で飲んでいると、飲んでいない人よりも
脳梗塞になる確率が何分の一かに減らせる、
という、非常に良い薬です。
細かい話は専門的になるんで省きますけど。
おおざっぱに言うと、心房細動があって、
脳梗塞になる恐れの高い人。
具体的には、高齢者とか、高血圧や糖尿病があるとか、
心臓弁膜症があったり、心不全がある人、
そして、実際に脳梗塞になった事がある人。
こういう人にワーファリンを飲んでもらって、
ちょうど良くコントロール出来たら、
脳梗塞の確率を半分とか三分の一に出来る、
っていうデーターがたくさんあります。
そいで、この「ワーファリン」っていう薬。
これは「納豆を食べてはいけない」っていう事で
有名な薬なんですよ。
他の血液を固まりにくくする薬を飲んでる患者さんからも、
「先生、納豆食べたら駄目なんですか？」
って聞かれる事もあるんですけど。
「納豆を食べてはいけない血液をサラサラにする薬」
っていうのは「ワーファリン」だけです。
それと、この薬。
診察のたびに毎回採血をして「ちょうどよく効かせる」
っていう必要があるんです。
他の薬みたいに、毎日１錠とか２錠飲めばよい、
っていう訳にはいかない薬です。
血液検査をして、薬の効果を確認して、
その都度、薬の量を調節する、っていう事が必要なので。
慣れていない医者だと、ちょっと難しいです。
循環器内科医とか脳外科医、神経内科医であれば
使い慣れているんで良いんですけど、
それ以外の医師だと、慣れるまではちょっと大変ですね。
だから、基本的にはワーファリンを使う場合には
専門の先生に診てもらう、っていう事になります。
ワーファリンは非常に良い薬なんだけど、コントロール
するのがちょっと難しいっていう欠点があるんですけど。
ここ２，３年で、ワーファリンと同じくらい
心房細動の人に使って脳梗塞を減らせる、っていう薬が
日本でもやっと使えるようになりました。
具体的にはプラザキサっていう薬と、イグザレルト、
という薬なんですが、もちろん覚える必要はありません。
ちなみに、もう少しであと一つ新しい薬が認可される予定です。
これらの薬はワーファリンと同じくらいの効果があるけど、
毎回採血する必要はないですよ、って薬です。
こういう薬が出てきて、やっと心房細動とか脳梗塞の
治療が専門の医師でなくても出来るようになったんですよ。
心房細動で脳梗塞の患者さんは、かなり増えていて、
全部専門医が診ていたら、負担が大きくなっていた所なんで、
正直、かなり助かっています。
脳梗塞に関しては、血圧が高かったり、
心拍数が速すぎたり遅すぎたりしてもなりやすいので。
ワーファリンをしっかり効かせて、血圧や心拍数も
きちんとコントロールする事が大事になります。
自分が心房細動で、薬を飲んでいる人とか、
家族で心房細動の人がいたら、自動血圧計で
血圧とか心拍数とかを測った方が良いですよ！
詳しい話は、「心房細動ガイドライン」
っていうのがあるので、興味のある人は
読んでみてくださいね！
○「心房細動 ガイドライン 2008」
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_ogawa_d.pdf
そいじゃあ、今日はここまで。
いつものように、下にまとめを書いておきまーす。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【今日のまとめ】
●心房細動の種類
（１）発作性（一過性）心房細動
７日以内に自然停止する心房細動。
（２）持続性心房細動
７日以内に自然停止しない心房細動。
（３）慢性心房細動
半年以上ずーっと心房細動が続いているもの。
●心房細動の治療
○最も重要なのは、脳梗塞を予防する事。
○心房細動があって、脳梗塞になった事がある人や、
高齢者、高血圧、糖尿病、心臓弁膜症、
心不全がある人は脳梗塞になる確率が高い。
○こういう人は、ワーファリン等、血液が固まりにくく
なる薬を飲んで治療を行う。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
３年前に心房細動の話を書いた時には、脳梗塞の予防薬、
日本ではワーファリンしか使えなかったんですけど。
今は、新しい薬がどんどん出来ているんですよ。
血液が固まりにくくなる薬は、逆に脳出血とかにも
なりやすくなっちゃいますから。
特に高齢者の場合は、注意が必要ですよ。
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