左から「鳥の海ふれあい市場」の高橋真理子店長、菊地一男理事長、佐藤さやかさん。 | | 今年から始まった「はらこ飯弁当」(800円)の販売。昼前に売り切れる日もある。 | | 被災した温泉宿泊施設「わたり温泉鳥の海」。現在は「ふれあい市場」のみ、仮設店舗で営業再開! | | | | きらきらと輝くイクラに、甘じょっぱく煮付けられたサケの切り身とご飯。一口ほおばると、「故郷に帰って来たんだなあ」とほっとします。亘理町出身者のソウルフード、「はらこ飯」です。 亘理町荒浜にある「鳥の海ふれあい市場」は、2008年に町の農家や漁業者などが集まって、町営の温泉施設「わたり温泉鳥の海」の1階に、産直市場としてオープンしました。近くの港で水揚げされたカレイやカニなどの海産物から、新鮮な野菜、特産のイチゴを使ったお菓子・ワインまで、亘理のものならなんでも揃う。海を眺める露天風呂に入った後は、ふれあい市場で買い物。県内外から年間17万人が訪れる、人気観光スポットでした。その町の人にとって特別な場所を、津波が襲いました。従業員の佐藤さやかさんが、当時の様子を説明してくれました。「屋上から見たら、周りは一面海になっていました。波と流される防風林の松がぶつかって、とにかく建物が揺れるんです。大型船に乗ってるみたい。次の日1階に下りたら水は引いてたけど、もうごちゃごちゃで、いろんな匂いがしましたね」 せっかく亘理に沢山の人を呼び込んだ町の観光名所が無くなってしまう……。市場のあった5階建ての建物のそばには、同じ高さ程のいくつもの瓦礫の山が並びました。「正直、再開出来ないんじゃないかっていうのはあったね。組合員で亡くなった人もいたし、お客さんも来ないんじゃないか。でも荒浜に育った以上、このままじゃいけないと思ったんだ。誰かが先頭切んなきゃ」そう決意したふれあい市場協同組合の菊地一男理事長は、震災から9ヶ月経った去年12月、荒浜漁港の前の仮設店舗で市場の営業を再開させました。 秋晴れの休日に訪れると、市場は買い物客で賑わっていました。人気商品は、今まさに旬を迎えている「はらこ飯」です。阿武隈川口に位置する亘理町は、サケ漁が盛んだった地域。「はらこ飯」は、地元漁民が伊達政宗公に献上しとても気に入られた、という話が伝わっているほど有名な郷土料理です。家庭によって味付けや盛り付け方が違います。ここで作られる「はらこ飯」は、菊地理事長の奥様の指導によるもの。「うちのはらこ飯は、米を炊く時の煮汁(醤油、砂糖、酒など)にサケの頭とかハラス(お腹の周りの身)も入れんの。そんでその身をほぐしてご飯にも混ぜるから、こってりしていい味が出てんだなぁ」と、菊地理事長は自慢げに語ります。御重に入っているような上品な味付けの「はらこ飯」もいいですが、こちらは昔おばあちゃんの家で食べたような懐かしい味。ご飯にサケの身が入っているので、食べ応えもあります。 客足は戻りつつあるものの、営業は土日祝日に限られ売り上げもまだまだの状態。でも菊地理事長は力強く言います。「この町は本当に恵まれてるなあって思うの。はらこ飯もだし、春はホッキ飯に夏はシャコ飯、アナゴ飯。イチゴにリンゴもある。海のものも山のものも全部揃う。だから、必ずまた荒浜に人は戻ってくる」 (平沼敦子/宮城県出身) |
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