レビュアー:加倉井路子 | まぐまぐから出ている有料メルマガの、ほぼ全てに目を通すアラサー女子。幼少より哲学に興味を持ち、学生時代はラテン語を学ぶ。趣味は家電店巡り。 | | | 奇才のクリエイターによる 自意識過剰気味な講演内容とは?
創刊早々大いに人気を博している、オタキングこと岡田斗司夫氏。のちにエヴァンゲリオンを生んだ有名なアニメ制作会社「ガイナックス」を創業し、現在は作家・評論家として活躍。また最近では、レコーディングダイエットで50kgもの減量に成功したことが話題になるなど、その活動の幅はサブカルチャーの範疇にとどまらず広がりをみせている。
そんな岡田氏によるメルマガ「岡田斗司夫プレミアム」は、氏が全国津々浦々で行った講演の模様を、テキストに書き起こして月額210円の安さで提供してくれるもの。「社会と人生の仕組みの理解を深めながら楽しめると大評判」な岡田ワールドに、初心者が第一歩を踏み入れるには手頃な価格だ。
初回号で配信されたのは、朝日新聞土曜別冊『be』10周年講演の書き起こし。読者悩み相談室「悩みのるつぼ」の回答者である岡田氏が、悩みが書かれた付箋を実際に手に取り、ライブで回答する構成になっている。講演冒頭から岡田氏は、自己紹介を交えつつ、他の悩み相談員たちの弱点分析を始めた。上野千鶴子については「読者の30%はすっとするけど、7割を潜在的な敵に回すに違いない。(中略)ということは俺が勝てる」、車屋長吉には「読者の中で半分くらいの人は『うん、車谷さんの話は深い』って感動するけど、残り半分は『何だよこいつ、何も答えてないじゃないかよ』と思うに違いない。勝てる」、金子勝には「必ずその人が現実可能な答えで、できることをちゃんと回答で出してこられる。ということは、その分面白みが少ないはずだと。ここも僕が勝てる」と、高らかに勝利宣言。
ライバル罵倒に続き、岡田氏は歴代の悩み相談名人たちの相談スタイルを例に挙げながら、「悩みとは何か」を語り始める。正確に言えば、「岡田斗司夫に相談するにふさわしい悩みの定義と範囲」の事前説明のような内容。北方謙三、中島らも、橋本治、香山リカ、勝間和代から、果ては一般人のYahoo知恵袋、発言小町まで「この方(サイト)は悩みをこう定義し、こう回答する形式ですが、僕はもうちょっとこうですので、その点ご了承ください」というお断りが延々と語られる。マッサージ店で「当店のサービスはリラクゼーションを目的とした施術を行っており、医療行為を行うものではありません」という但し書きを見せられた時に似た、軽いがっかり感。悩みに対し客観的視点を与えてくれる「悩みの因数分解」を得意とする彼だが、自分についても相当な批判的視点にさいなまれているのだろうか。自意識過剰の相談員とは、実に新しいスタイルを確立したものだ。 |
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