南相馬市の全ての仮設住宅を対象に、月二回のペースで巡回している。
現在は、現地の状況も考慮しながら、新鮮な野菜と安全な水を配布している。
現場リーダーを務めるフィリップ・ダンカンさん
彼らが届けるのは、物資と「我々は、南相馬の人たちを忘れていない」というメッセージ。
| | 駐車場に滑り込んだ4トントラックが停車すると、間もなく数人のスタッフが小走りでやってきました。荷台に上がったマイケル・マーティンさんが「これ、重いから気をつけて下さいね!」と流暢な日本語でサツマイモの入った段ボール箱をスタッフの山本新さんへ手渡します。 物珍しそうに集まってきた仮設住宅の子どもたち。カナダ出身で東京でデザイナーをしているシェマ・エイミーさんが、子どもたちの前に歩み寄り、中腰になって「こんにちは」と声を掛けハイタッチの仕草をします。少し驚いた表情の子どもたちは、瞬く間に笑顔に変わり二本の腕を精一杯頭上にあげてタッチを返してきました。
この日、セーブ南相馬プロジェクトのメンバーがやって来たのは、 福島第一原発から二十数kmに位置する、福島県南相馬市の仮設住宅です。震災から約二年間、2週間に一度のペースで南相馬を訪れ、すべての仮設住宅を巡回しながら飲料水と新鮮な野菜の支援をつづけています。活動のスタートは、震災2ヶ月後でした。東京在住のアメリカ人オーガスト・ハーゲスハイマーさんが、Facebookを使って福島県南相馬市への支援を呼びかけた事がはじまりでした。オーガストさんは、原発事故の影響で物流が途絶えていた南相馬市の状況を知り、物資の支援を計画。「市役所や避難所には全国から支援物資が寄せられていましたが、避難所の外に住む人達には必要なものが届いていなかった」と当時を振り返ります。オーガストさんの活動に賛同した日本在住の外国人、日本人、東北や地元南相馬のメンバーが全国から集り活動が続いています。 また、東京では活動紹介と支援を呼びかけるためのチャリティー・パーティーを定期的に開催。集まった支援金は全額、現地に届けられる物資の購入に当てられています。多くのボランティア団体の活動が終息を迎える中、セーブ南相馬プロジェクトの活動は44回を数え、今後も継続する予定です。 今日、配布を行っている仮設住宅では、プロジェクトのメンバーが、住民一人一人に物資を手渡ししていました。もう一人のメンバーが、持ちきれない物資を持って必ずお宅の玄関先まで一緒に運んで行きます。原発近くの浪江町から避難してきたという70歳になるおばあちゃんが、サツマイモの入った箱を抱えるマイケルさんにしきりに話しかけています。「温かくなったら、ここに花を植えようと思ってねぇ」とおばあちゃん。彼女が指差した先には、駐車場脇の小さな花壇でした。帰り際、おばあちゃんが涙目になり「ありがとう。遠くから来てくれてうれしいよ」と感謝の言葉を投げかけると、マイケルさんは「また来ますから。体を大切に」と笑顔で返します。
現場リーダーのフィリップダンカンさんは、「ほかの被災地は、時間とともに復旧が進んでいますが、原発周辺ではいつ帰宅出来るかわからない状況。多くの住民が、先の見えない不安を感じている」といいます。「物資だけでなく、"忘れない"という思いも届けたい」とダンカンさん。一貫して南相馬の支援をつづける彼らの姿勢は、言葉を越えた意志となって、住民を勇気づけています。(岸田浩和)
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