「竹がどれぐらいのスピードで成長するか知ってます?なんと1日に最高で4尺(約120センチ)も伸びるんですよ。びっくりでしょう。」地面から顔を出したタケノコを指して、丸森町のタケノコ農家・八島哲郎さん(51)が説明してくれました。 福島との県境、宮城県最南端に位置する丸森町は、宮城県内でも有数のタケノコの産地です。タケノコは4月下旬から出始め、今がまさに最盛期。例年であれば直売所に朝採りのタケノコが山積みになり、20年以上続くタケノコ狩りツアーは大型バスでツアーが組まれるほどの人気で、地元農家の大きな収入源となっていました。しかし震災以降、春の山里の風景は一変します。原発事故の影響で町内の一部のタケノコから放射性物質が検出され、昨年5月から丸森のタケノコは出荷停止になっているためです。 美味しいタケノコを収穫するには、一年を通じて竹林の手入れが必要です。理想の竹の本数は1坪に1本。それ以上増えると日当たりが悪くなるため、古い竹は間引き、下草は刈り、地面には肥料用に砕いた竹のチップをまきます。「竹は3〜5年モノが、いいお母さんになるんだねえ。春になるとたくさん子供が生まれるんです」そのままにしておくとタケノコは、どんどん成長して竹になってしまいます。そこで、昨年はボランティアを募り、出荷できないタケノコを鍬で切り倒しました。処分したタケノコは4000本以上。一ヶ所に集めると、大きな「ゴミ」の山が出来ました。「今まで収穫したものを山に置いてくるなんて、やったことがないのよ。それが今は一本も持ち出せない。タケノコに『なんで置いてくのか、連れてって食べてくれ』って言われている気がしたなあ。」 今シーズンのタケノコの検査は、4月22日から始まりました。しかしタケノコの収穫時期は5月中旬までと短く、基準をクリア出来たとしても今年の出荷再開は難しいのが現状です。2年空白期間が続くことで、地元の人がタケノコ作りを諦めてしまわないか、そして竹林が荒れてしまうのではないか、八島さんは心配しています。 結局今シーズンも、出荷出来ず伸びるタケノコを処分するため、ボランティアの募集を始めました。「竹林を渡る風、ウグイスが鳴く声。山と川、田んぼが連なる景色。昔話に出てくるようなほんわりとした生活が、丸森の魅力だったのよ。それが傷付けられてしまった。だから作業を通じて、一人でも多くの人に丸森の農家や竹林の現状を知ってもらいたいんです」八島さんはこれからも、丸森から情報を発信し続けていきます。(平沼敦子) | | えぐみが少なく柔らかいと人気のタケノコ
4年前に開発したタケノコのレトルトカレー
ボランティアは5月14・18日に活動予定
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