中島 聡 マイクロソフトでWindows95、Windows98、Internet Explorer 3.0/4.0のチーフアーキテクトなどを務めた。現在シアトル在住。「エンジニアのための経営学講座」を中心としたゼミ形式のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では世界に通用するエンジニアになるためのノウハウを分かりやすく解説。 | とても良い質問をありがとうございます。Amazon は非常に特殊な会社なのです。上場もして、あれだけ大きな会社になったいまでも、成長のための積極的な投資をして、意図的に黒字を出さないようにしているのは、とても「異常」なことなのです。 普通、上場している会社は、事業活動から利益を生み出し、それを配当や株価という形で株主に還元するために存在します。 会社が小さくて急速に成長している段階では、株主への還元よりも成長のための投資(設備投資や研究開発投資)を優先して大半の利益(もしくはそれ以上)を投資に使うため、赤字決算になることも普通だし、株主がそれを問題視することはありません。 しかし、会社が大きくなり安定してくるに従い、それほどの成長率は見込めなくなるため、将来への投資の割合を減らし、大半の利益を株主への還元に回すようになるのが普通です。上場企業の多くが、配当を出したり自社株買いをするのはそれが理由です。当然、上場企業の経営者には(株主への還元を可能にする)黒字経営を株主たちから期待されます。 mixi が早すぎる上場のために積極的な投資が出来なくなり、非上場のまま投資家から莫大な資金を集めて赤字覚悟で積極的な投資をした結果急成長した Facebook に負けてしまったことは、このメルマガでも指摘したことがあります。 そう考えると、Amazon はとっくに株主への利益の還元をしても良いのですが、これだけ大きくなった今でも「まだまだ成長できる」と確信している Jeff Bezos が利益の大半を将来のための投資に使ってしまっているのです。 株主からは、何年も前から「投資のスピードを緩めて、株主への還元をしてほしい」というリクエストがきていますが、Bezos は「まだまだ成長できる。この経営方針が嫌だったら Amazon の株は売却して他の会社の株を買って欲しい。Amazon の長期戦略を信じる人たちだけに株主になって欲しい」と強気の姿勢でいるのです。 こんな経営方針が気に入らずに株を売却してしまった株主たちも大勢いると思いますが、再投資が成功していることを示す売り上げの上昇が続く限りは Amazon の株を持ち続けようという辛抱強い株主たちも大勢いるため、今の Amazon の株価が維持されているのです。 私は Amazon 内部に何人も知り合いがいますが、彼らは「さすがに株主たちからのプレッシャーが高まり、そろそろ利益を出さないといけない時期に来ている」と感じているそうです。そうは言っても、これだけは Jeff Bezos 次第なのでなんとも言えませんが、私自身はまだまだ(投資を続けて)成長し続けて欲しいと感じています。 |
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