冷泉 彰彦 現在、プリンストン日本語学校高等部主任。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を隔週寄稿。アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」『冷泉彰彦のプリンストン通信』では、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届け! | 現代のアメリカ文化ですが、例えば90年代のRATMのような「ウルトラ・リベラル」なカルチャーがあるかというと、そのような突出したものは少ないように思います。 では、アメリカの若者が保守化したのかというと、決してそうでもなく、今の20代から30代にかけてのカルチャー的なポジションとしては、オバマの中道左派路線よりやや左という辺りが平均だと思います。 では、どうして突出しないのかというと、「複雑な現代の状況に対抗するには、理念的なアプローチよりリアリズム」の方が有効だというような感覚があるからだと考えられます。 アメリカの理想主義のフロンティアが消えつつあることもあるかもしれません。例えば、同性婚に関しては全国的に承認の流れが決定的になりましたし、今は、改めてフェミニズムの運動が盛んですが、これも女性経営者がどんどん誕生する中で「仕上げの運動」に近い感覚があります。 残る問題は「反戦平和」ということになりますが、この問題に関しても激しいメッセージ性を訴えるよりも、帰還兵のPTSDをしっかり見つめるなどのリアリズムの方が選択される時代です。 そんな中で、若い世代に受けているのは「リバタリアニズム」であり、また「究極の価値相対化」のような思想です。前者であれば、引退した政治家のロン・ポール、後者であれば「無神論の権化」のような漫談家のビル・マーといったようなキャラクターが今でも受けているのです。 そうした「中道リアリズム」的な、ある意味では「冷笑主義」的なカルチャーが主流になっている背景には、オバマという「比較的若い、そして中道左派の」政治家が大統領であるということへの「やや無責任な安心感」があるように思います。 これが「リベラル・タカ派のヒラリー」とか「共和党政権」になるようですと、再び若者たちの中から理念的なチャレンジの気風が沸き起こるかもしれません。 |
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